ロキオの温泉デビュー記
ロキオと2人で日本を訪れたのは、かれこれ3年近く前だ。
3か月間の日本滞在中、ロキオは人生初の温泉デビューを果たした。
一応説明しておくと、カナダには温泉どころか「湯につかる」という文化がそもそもなく、わたしもこちらで暮らし始めてからはほとんど毎日シャワーを浴びている。
冬にはー20度を平気で超えるトロントの冬。
日本人のわたしとしては、
「カナダ人たちよ。君たちこそ毎日湯船につかって冷えた体を温めるべきだろう?」
と思うのだが、彼らはササッと15分程度でシャワーを済ませて
何食わぬ顔で次の日も雪の中仕事へ向かうのだ。
ロキオもその中の一人で、小さい時にかろうじて湯船に浸かった経験はあるものの、
銭湯と温泉は日本でが初めてであった。
わたしたちはその日、京都旅行を経て夜行バスで早朝に福岡に到着した。
福岡から次の目的地へ行くのに数時間空いたので、疲れていたわたしは近くの銭湯に行ってリフレッシュしようと彼に提案した。
「銭湯って、みんな素っ裸で同じバスタブに入るやつでしょ?」
あまり乗り気でない彼をよそに、わたしは1年半ぶりの銭湯!!とるんるん。
銭湯に着いてフロントでタオルを借り、廊下を進むとついに女湯と男湯の分かれ道に。
彼には事前に一通りロッカールームの使用の手順や銭湯でのマナーを彼に伝えていたのだが、彼はのれんの前で不安そうにわたしを見つめている。
「こんな小さなタオルじゃ何も隠せないよ。」
フロントのお姉さんが貸してくれたタオルを右手に、大きなロキオは不安そうに言う。
「別に隠さなくていいんだよ。それは身体を洗ったり顔を拭いたりする用だから。」
「でも・・・。」
「ハイ、がんばって!じゃあね~」
わたしはわざと彼を置き去りにし、女湯ののれんをくぐった。
あ~気持ちよかった。
久しぶりのお風呂に癒されたわたしはコーヒー牛乳を一気飲みした後、畳の敷いてある広場でゆっくりくつろいでいた。
暑い場所が苦手なロキオなので長くても20分程で出てくるだろうと思っていたのに、1時間経った今もまだ広場に現れない。
それから15分くらい経った頃、やっと彼が帰ってきた。
わたしは「なんでそんなに遅かったの?」と聞いてみた。
彼は浴室での出来事を、細かく説明してくれた。
「浴室に入ったら、しわしわの蛇をぶらさげたおやじたちがそこらへんをウロウロしていたんだ。僕は恥ずかしいから小さなタオルで一生懸命身体を隠していたのに、僕以外誰も隠していなかった。」
しわしわの蛇・・・・。
うん、それで?
「僕がバスタブに入ると、遠くで湯につかっていたひとりのおやじが近づいてきて、日本語で話しかけてきた。
僕はわからないからただ聞いていただけだったんだけど、おやじは他のおやじたちも巻き込んで喋り出して、みんなでがっはっはと笑い出したんだ。分からないけど僕もとりあえず笑ってみた。」
(笑)
そうか。初めての銭湯楽しかった?
「うーん。やっぱりさ、日本って変だね。
僕は銭湯も温泉ももういいや。今日で終わり。」
九州のおやじたちに囲まれ(しかも無数のしわしわ蛇を毎秒目にしながら)、暑い湿った空間に1時間以上監禁されていたロキオは疲れてしまっていた。
しかも湯が熱すぎて最後の10分はずっと水風呂で身体を冷やしていたとのこと。
カナダ生まれカナダ育ちのロキオ。
どうも初回はこの国の素晴らしいお風呂文化を楽しめなかった様子。
しかしそんな彼に第2のチャンスが訪れた。
わたしの叔父と叔母が熊本の阿蘇でペンションを経営しており、
そこに母と彼と3人で訪れた時のこと。
彼らのペンションは黒川温泉から徒歩10~15分という
なんとも贅沢な場所にあるため、
わたしたち2人は温泉グッズをリュックに詰め込み、
徒歩で黒川温泉地区に向かった。
緑に囲まれた、古い趣のある温泉街を歩いているうちに、ロキオの温泉への期待は高まっていた。
福岡の銭湯でのことはすっかり忘れている。
それもそのはず。阿蘇の美しい自然と広大な景色。
耳を澄ますと聞こえる野鳥たちの声。
叔父叔母たちが一から建てた木造のロッジと、素朴で可愛らしいインテリア。
魅力ありすぎるので詳しくはこちらの記事で。ほんとここ最高・・・(ため息)。
全員行ってほしい。
「ポーランの笛」(わたしの叔父叔母のペンション)はこちらから閲覧・宿泊予約できます。↓
https://www.facebook.com/polannofue/
いわゆるシティーボーイのロキオは、
目をキラキラさせながらあたりをくまなく探索していた。
ようやくいくつかある温泉のうちひとつに決め、中へ入る。
ロキオは今回、不安気な様子もなくサッと男湯に続く廊下をずんずん進んでいった。
わたしも女湯へ向かう。
存分に温泉を満喫した後、わたしはマスカットサイダー(瓶)を飲みながらロビーに向かった。
ロキオがいる。
温泉、どうだった?
おそるおそる聞いてみた。
「はぁ~気持ちよかった。温泉 IS AMAZING!!!」
ロキオは満足げな顔で言ってのけた。
わたしたちが行ったのがちょうど熊本地震の2か月後だったということもあり、
人がほとんどいなかったため、ロキオはひとり露天風呂を心ゆくまで楽しんだようだった。
「お湯が肌の上を滑るようにスムーズで、
森と湧き出る温泉の香りでとても癒されたしリラックスできたよ!」
銭湯デビューの時とはうってかわって、若手の女レポーターのような口調で温泉への感動を語っていた。
これにて、ロキオの温泉文化へのイメージは払拭された(と願う)。
阿蘇の自然よ、ありがとう。
すっかり温泉大好きになったロキオはその後も何度か九州各地の温泉を訪れ、
日本を去るころには平気で大衆向けの銭湯に入れるまでに成長していた。
今では例の福岡しわしわ蛇事件もネタにして、
会う人会う人に面白おかしく自分の経験を語っている。
ロキオの様子を終始見守りながら、
日本以外のほとんどの国の人たちにとって、温泉・銭湯文化はきっと不思議でしょうがないものなんだろうな、と彼らの視点に立って考えてみた。
だって普段服を着てすました顔で表を歩いている他人同士が、突然素っ裸でバスタブを共有し、時にとなりに座って世間話をし、そして何事もなかったかのように「あ~気持ちよかった」と服を着て帰っていく。
しかも「世界一シャイな人類」である日本人がそれを平気でやっているというのがさらに謎であろう。
ロキオと一緒になってから特に思う。日本って不思議な国だなって。
そのミステリアスさにはまって日本を何度も訪れる外国人が多いのも分かる。
ロキオの温泉デビュー記。
次日本に行くときは、草津か道後か湯布院か?
わたしの密かな夢は、ベタながら温泉で浴衣来て卓球。
または浴衣来て旅館飯+日本酒・・・。ふふふ。
その時はまたレポートします。
☀おしまい☀
可愛いけれど厄介な夫の習慣
ロキオには、可愛いけれど少し厄介な習性がある。
それは1人で眠れないこと。
三十路の、熊よりでかいおっさんが1人で眠れない。
今朝、彼は済ませなければいけないことがあって早朝からパソコンに向かっていた。
わたしは前日のバドミントンがこたえてわりと遅くまでゆっくり寝ていた。
わたしが起きたちょうどの時間に彼の仕事がちょうど終わったらしく、ベッドにダイブしてきた。
わたしは十分寝たので、さて美味しいお茶でも淹れて目を覚まそうとキッチンへ向かう。
何かがわたしの腕を、ぐいぐい引っ張っている。んん?
熊よりでかい物体が、生まれたての子犬みたいな顔でこちらを見ている。
「知ってるでしょう?僕は1人じゃ眠れないの。だから一緒にまた寝よう。」
そう。ロキオの可愛いけど厄介なところは、1人で寝るのはいやだ!とだだをこねるところ。
今の今まで寝ていたのにまた寝ろ(しかも本来起きるべき時間帯に)ってさ。
ねぇロキオ。普通に考えてちょっと強引ではないか?
「朝からお疲れさま。眠かったらゆっくり寝たらいいよ。」
なだめてからベッドを離れようと試みる。
すると彼は、とんでもないことを口にした。
「僕が眠いということは、僕のワイフも眠いってことだね。さ、寝よう!ハイ、スリーーープ!」
こんな理屈、ジャイアンでも押し通せない。
結婚してからずっと、わたしの役目は1人で眠れない彼をなだめること。
夜も同じで、わたしが仕事から帰ってきてソファに座った瞬間に
「おつかれ!早くシャワー浴びてきて~そして一緒に寝よう」
と言われる。いや、ロキオくん?わたし今座ったばっかりやん・・・?
わたしは仕事の後、お茶を淹れてまったりしたりビールを飲みながら物思いにふける時間が好きだ。体力がまだあるときは文章を書いたり、先日の記事で書いた「ガールズお茶会」の構想を練ったりする。こういう「自分時間」が1日の中で少しでもある方が、わたしの場合はライフスタイルが整うのだ。
わたしはなんとかしてロキオをなだめて自分時間を確保しようとする。
先に寝ててね、待たなくていいからね。と何度も念押しをし、まくらを4個彼の身体の周りに設置して(ロキオはまくらが大好き)スムーズに眠りに入れるように快適な空間を作り、最後に「おつかれさま。アイラブユー!」まで伝えてベッドを去る。
「はっはっは。これで完璧。もうこれでおとなしくぐっすり寝るだろう」
心の中でうしっ!とガッツポーズをしながら自分時間の準備をする。
数分後。
「タラタララ~タラ~♪」
なにやらベッドの方から聞こえるので、おそるおそる振り返る。
ロキオが携帯でゲームを始めた音だった。
「寝ていいよっていったじゃん!てか寝て!!!」
彼はベッドの手前にある本棚の隙間に隠れながら、たまにちらちらわたしを見て無邪気に1人かくれんぼをして遊んでいる。
わたしはため息をついた。
彼はまた言う。
「僕はね、ワイフがいないと眠れないの。だから早く帰ってきて」
こういうことを言いながらベッドでだだをこねる女の子がいたら、可愛すぎて彼氏は悶えると思う。
でもベッドに横たわっているのは181cm100キロの巨大なおっさんであり、しかもそのおっさんは高確率でパンツ一丁なのだ。
そんなロキオなので、わたしもたまには自分時間を諦めて「はいはい、一緒に寝よう」と折れる時もある。そうすると、彼はとても喜ぶ。髭をこすりつけてじょりじょりしてくる。
逆にほったらかしすぎると拗ねてしまってズーンと暗い空気になることがあるので、そこはわたしが頃合いを見計らってフォローする。そのへんは一緒に住んでいるうちに学んだ。たまには構ってあげないとね。
わたしはこういうロキオの性格をわかっているから、彼とわたしの2人3脚のこの長ーい旅においては「彼の気持ちを察してなだめる」というのがわたしの役割だと思っている。わたしなしで眠れない彼も彼の一部だし、そういうところもひっくるめて好きだし一緒にいるからだ。
これからもわたしは彼をなだめ続けるんだろう。
そろそろロキオが、「早く寝よ~」と言い出すころだ。
今日はこれくらいにして、彼の待つ寝床へ向かうとしよう。
☀おしまい☀
男はみんないい男。ダメにしているのはあなたです。
自分の彼のことを悪く言ってしまう女性ってほんとうに多い。
「うちの彼、週末はごろごろしてテレビばっかり」
「旦那の稼ぎが悪くて」
「(他人の彼氏に対して)いいなぁ、〇〇ちゃんはかっこよくて優しい彼がいて」
こういう子もいる。
「わたしの彼、付き合ってすぐのころはすごく優しくておしゃれでかっこよかったんです。でも今は正反対。だらしないし、ちっとも優しくしてくれない。」
・・・みんなどんだけ棚に上げ子ちゃんなんだ!
必殺技なのかと思うくらい自分を棚に上げてものを言っている。
こういうのを聞くと、わたしは思う。
「その現実、100%あなたが作ってるよ!!!!」
そう、男をそうさせているのは、まぎれもなくあなたなのです。
わたしは何も、
「じゃあなに。女のキミはスタイル超抜群の美人で、毎朝彼のためにキャラ弁を作って笑顔で見送れるようなデキ女なのか?彼のことをそんなに言える立場なのかい?えぇ?!」
ということを言いたいのではない。
わたしが言いたいのは、
「あなたは彼の悪い部分をわざわざ見ている。そうすることを選んでいる。それを自ら自覚してほしい」
ということだ。
あなたの彼には「すばらしい面」がたーーーーくさんある。
「わたしの彼にはないです。」そんなことはあり得ない。
ないと思ってしまうのは、まだまだあなたの視野が狭いからだ。
彼に魅力がないと感じるのは、彼のせいではなくてそれを見いだせない女性側の問題だととらえた方がいい。
でもそれは今から変えられる。
今正直、自分の彼がどうしようもない奴だなと思っている人は、もっともっと、自分のパートナーに目を向けてほしい。「彼のいいところはどこかな?」と一度ゼロに立ち返って考えてみてほしい。よーく見てみたら、けっこうたくさん見つかるものだ。
だってあなたが選んだ男じゃない?付き合おうと決めた時、彼に少なからず魅力を感じていたでしょう。そこらへんに落ちてたダンゴムシと付き合ったわけじゃないでしょう。
「わたしが選んだ男なんだから、いい男に決まってる!」
そう思って、彼を見つめなおして見てほしい。
わたしのおすすめのやり方をシェアしてみよう。
・最低週に1度、彼のいいところリストを作る
→1か月後にリストをまとめたものを彼に送る(これは効果抜群)
・彼にしてもらって嬉しかったことをメモする癖をつける
・感謝の気持ちはすぐ、且つ具体的に彼に伝える
・まわりの人に彼のいいところを言いまくる
(何度もアウトプットすることで自然とそう思える思考回路になる)
・どうしてもいいと思えないところは、なぜそう思えないのか深掘りする
※無理やりいい!と思い込むのではなく、少し視野を広げて「こういう彼の一面も受け入れていこう」と努力する。
わたしはこれを日常的にやり出してから、ロキオとの関係がさらによくなった。
よく、
「どうやったらそんな円満に夫婦関係を築けるんですか?」
という質問をいただく。
その一つの答えは、女性であるわたしの心構えにある。
ロキオだって、みんなが思う「完璧」では全然ない。
帰宅後はいつも仕事着を投げ散らかしているし、疲れた~が口癖だし、おなかはぷよぷよだし、幼稚園児みたいにくだらないことですぐ拗ねる。
でもわたしはそんな彼を完璧だと思っている。
わたしはいつも、彼の「いいところ」にフォーカスするよう意識しているから。
いいところに着目するようになるとわたしの言動も当然それに沿ったものになるから、彼をよく褒めるようになる。彼に優しくできるようになる。「ありがとう」を言う回数が増える。すると彼も嬉しいから、「いいところ」がどんどん伸びる。
いいところを考えている時間が長くなるので、時に彼の短所が見えても「まぁいいか」「そんな時もあるよね」って許せるようになる。
あなたの彼も、きっと完璧。
そうじゃないと思ってる原因は、実は自分にあるかも?
と自覚するところから始めてほしい。
男はみんないい男。
もっといい男に育てられるかはあなた次第です。
ロキオの好きなにほんご
ロキオ的にほんごブームというのがある。
覚えて響きが気に入ればそればっかり使っている。
ちなみにロキオの日本語レベルは2歳児くらい。
「ありがとう」「よろしく」「お疲れ様」くらいは言えるけれど。
最近は「寒い」「暑い」という言葉を自分でアレンジして「しゃむい」「あちゅい」というのにはまっている。
「それさ、赤ちゃん言葉っぽいから幼稚に聞こえるよ。家で使う分にはいいけど」
「Ok. I only use them at home!(わかった!家でだけ使うよ)」
それで毎日、朝方にかけぶとん布団がないと(わたしが寝ている間にくるくる回転して彼の分も巻き取ってしまうため)、「しゃぁああむいいいいい!」を連呼しながら必死に布団を奪い返そうとする。
つい先日友人一同とバトミントンにをしに出かけた時も、始めて15分くらいですぐに汗だくになり(やたら代謝がいい)、「あーーーちゅいいいいいい!!」と叫びながら飲み物を買いに行っていた。もはや公共の場でも家でも関係なく使っている。
あとは「あまかけるりゅうのひらめき!」という言葉にはまって練習していた時期もあった。「あまかけるりゅうのひらめき」とは、漫画「るろうに剣心」の主人公剣心が物語後半に習得する必殺技の名前である。以前2人でアニメを観ている時に剣心がこのワードを叫びながら敵に技を仕掛けるシーンに出くわした彼は、なんどもこの言葉を練習していた。
英語話者にとって、これをスラスラいうのは相当難しいようだった。特に「る」と「りゅ」の部分でつっかかるらしい。外国人の知り合いがいる人はぜひ言わせてみてほしい。絶対「Oh my god, it's too hard!」っていうから。
習得の難しさと使う頻度とを天秤にかけた時にどうにもわりにあわないので、彼の必死な有様をみて止めようかとも思った。
けれど,日本人でさえその大半が言わずして一生を終えるであろうこの言葉を、他にも覚えることあるだろうよと思わざるを得ないこのセリフを、なんとか習得しようと必死になる彼がなんともシュールで可愛かったので放っておいた。言えた時は「ねぇ!ワイフ!聞いた?聞いた?」と嬉しそうに報告してくる。
ある日、一緒にジブリの「平成狸合戦ぽんぽこ」という映画を見たことがあった。
途中、どういう話の流れだった忘れてしまったのだが、男たぬきたちが彼らの玉袋で(お食事中の方はすいません)空を飛ぶシーンがあった。これがロキオをかなり混乱させてしまった。日本のたぬきは玉袋で飛べるの?とか聞かれてしまった。わたしは何も答えられず、とにかく最後まで観た。
映画を見終わった後彼に「ところでタイトルのponpokoってどういう意味?」と聞かれた。玉袋の件でわたしも気が動転していたのだろう。何を思ったのか、彼曰くわたしはその時「ぽんぽこってのは精巣のことだよ」と答えたらしい(本人は記憶にない)。
それ以来、かれの中でぽんぽこは「あの袋」ということになってしまった。
またつまらぬ日本語を教えてしまった・・・。しかも間違ってるし。
響きが気に入ったのか、ことあるごとに「俺のぽんぽこが~」というような謎の下ジョークを言うようになってしまい、わたしは深く反省した。
日本に帰った時、万が一お好み焼き屋「道頓堀」に行こうものなら、「ぽんぽこぽん!」が飛び交う店内とそれを笑顔で連呼する店員に、彼は確実に困惑してしまう。
何の店だろうここは?!と思うに違いない。
かと言って、じゃあぽんぽこってなんだよって言われても説明が難しい。
たぬきの鳴き声はぽんぽこではなく多分「ギィーギィー」とかそんなんだろうし(適当)、結局何をもってたぬきをぽんぽこと表しているのかわからないので、わたしは途方に暮れている(誰かヘルプ・・・!)。
「どすこい!」という言葉にはまっていた時もあり、わたしが何か頼みごとをするたびに「どすこい!」と返事をしていた。
「ロキオ、ゴミ捨ててきて」「どすこい!!」
「もう~また靴下脱ぎっぱなし。かごに入れといて。」「どすこい!!!!」
・・・。何かが違う。
日本語はややこしい。
彼にはいつかちゃんとプロに教わってほしいと思っているので、わたしがあえてそれを一から教えることはないのだけれど、彼は彼なりに気にいった響きのものを拾ってはそれをそのまま口に出しているから、わたしも言葉には気をつけなきゃなと思う。
けどまあ、わたしの耳と目にはわりと分厚い旦那フィルターがかかっているので、多少ニュアンスが違っても彼が言う日本語はなんでも可愛いなと思ってしまう。で、結局直さずそのまま言わせとく。
なんだろうね、可愛いんです。
心の中で「ちょっとそれ違う~(笑)」と一人でつっこむのを楽しんでいる節はある。
きっと近い将来彼は日本語を話せるようになるんだろうけれど、どこかで「カタコトでもいいのになぁ~」とひっそり思っているわたしもいる。
ロキオくん、2019年はどんな言葉を覚えるかな。
みなさんのパートナーはどんな日本語が好きですか?
「あなたの夢は、僕の夢」ガールズ限定お茶会、始めました。
***
あけましておめでとうございます。
昨年末から始めた、カナダ人夫ロキオの観察日記。2019年もゆるく楽しく続けていく所存。
今年もロキオをどうぞよろしくおねがいいたします。
***
さて。
わたくし実は先月の初めから「Girlsお茶会」というものを開催している。毎週日曜、トロントに住む女性を対象にわたしのお気に入りのお茶2種類とちょっとしたお茶菓子を振る舞う会。ただ単に集まっておしゃべりをするのではなく、毎週テーマが決まっていてそれについてみんなで意見を出し合い深めていく。それは恋愛、結婚や出産、英語、夢や目標など様々。
昨年最後のテーマは「英語のスピーキングスキルの上げ方」だったのだが、かなり具体的且つ濃い内容で非常に盛り上がった。
その場にいる全員にいろんな情報や意見をシェアしてもらうので、毎度新しい発見や気づきがあって面白い。
トロントにいる、とくに留学生の多くは毎日学校や仕事や遊びに大忙しで、「自分と向き合う時間」という本来留学生にとって1番大切であろう時間(とわたしは思っている)をないがしろにしがちだ。
毎日何かを考えたり深めたりする間もなく、自分が結局この留学期間になにを得たのか、これから何をしたいのかも曖昧なまま気がつけば帰国…という人たちをたくさん見た。
考えるのをやめると、1年なんてあっという間に過ぎる。たとえ最初は真新しいことの連続でも、2、3ヶ月もすればすぐに慣れて多くの人は暇を持て余し始める。そのあとどう海外での生活を充実させるかはどれだけ考えて動けるかにかかっているのだ。
自分と向き合うのは簡単なことではないけど、わたしはそれをやり続けた人が本当の意味で幸せになれると信じているから、トロントにいる女性たちが1週間のうちのほんの数時間だけでも自分自身のことを見つめられる時間を持てたらいいな、と思う。
もちろん、美味しいお茶とお菓子をおともに。
そんな気持ちで始めたお茶会。
ここだけの話、実はお茶会を始めてから1番はりきっていたのはロキオだった。
「僕が週末おかしを焼くよ!!!」
「僕が君のイベントをサポートする!」
そう言って、第1回目のお茶会の前週、なにやらわたしにはよくわからないベイキンググッズをたくさん買ってきた。すぐに卵や小麦粉を揃えて、1回目は紅茶クッキーを焼いてくれた。2週目はほうじ茶プリン、クリスマスイブの前日はアイシング・クリスマス・クッキーを作って参加者に振る舞った。
そもそもお菓子を家で焼こうという概念のなかったわたしは、彼の熱心さに正直驚いていた。それまでは美味しいお菓子の売っているお店を探して買ってこようと思っていたので。
なるほど、家で作るという手があったか。
お菓子づくり超初心者のわたしは、正直な話人様に振る舞えるような品を作る自信がないので、デザート部門はロキオに任せることにした。
ロキオはわたしがお茶会を始めた週から、ものすごく厚いお菓子のレシピ本を穴があくほど読み出した。彼は長い間料理の仕事をしていたし、今はベーカリーで働いていることもあって、お菓子作りへの関心は強い。
最近はベーグルを作ると言って、イースト菌まで育成し始めた。酵母とか菌とかわたしにはちんぷんかんぷんなのだが、彼はキラキラした目でわたしに瓶を見せてくる。瓶の中のイースト菌はとてもこれが美味しいベーグルになるとは思えないほどグロい見た目だったが、彼はカブトムシを育てる少年のように毎日菌を観察している。
彼の協力もあり、お茶会は充実している。
やっぱり美味しいお茶には、美味しいお菓子が必須。
「時間のある時は、僕がお菓子を作るからね」
働いていて毎日忙しい彼だけれど、そう言ってくれる。
今までもそうだったけれど、妻のわたしがやりたいと言うことに対してロキオは基本的に全面サポートの姿勢を一貫している。
写真の仕事で新たな機器が必要な時はどうにか他をやりくりして買ってくれた。弟たちをトロントに呼ぶという小さいけれどわたしにとって大切な夢が昨年叶った時も、一生懸命彼らを喜ばせようと行く場所を提案したりお世話をしてくれたりした。昨年の春今の家に引っ越した時もそうだった。彼の両親の家から離れたいと言いだしたのはわたしで、それも一緒に叶えてくれた。
「あなたの夢は、僕の夢だから」
ロキオはいつも言う。
わたしができることはシンプルだ。
わたしも彼の夢を全力で応援し、サポートすること。
そして、いつも笑顔で彼の隣にいること。
このお茶会が今後どうわたしたちの将来につながるか分からない。けれど少なくとも「今のわたしがやりたいこと」であることは確かだ。
それを尊重し応援してくれるパートナーがいることに、一瞬たりとも感謝の気持ちを忘れたくはない。
いつもありがとう、ロキオ。