可愛いけれど厄介な夫の習慣
ロキオには、可愛いけれど少し厄介な習性がある。
それは1人で眠れないこと。
三十路の、熊よりでかいおっさんが1人で眠れない。
今朝、彼は済ませなければいけないことがあって早朝からパソコンに向かっていた。
わたしは前日のバドミントンがこたえてわりと遅くまでゆっくり寝ていた。
わたしが起きたちょうどの時間に彼の仕事がちょうど終わったらしく、ベッドにダイブしてきた。
わたしは十分寝たので、さて美味しいお茶でも淹れて目を覚まそうとキッチンへ向かう。
何かがわたしの腕を、ぐいぐい引っ張っている。んん?
熊よりでかい物体が、生まれたての子犬みたいな顔でこちらを見ている。
「知ってるでしょう?僕は1人じゃ眠れないの。だから一緒にまた寝よう。」
そう。ロキオの可愛いけど厄介なところは、1人で寝るのはいやだ!とだだをこねるところ。
今の今まで寝ていたのにまた寝ろ(しかも本来起きるべき時間帯に)ってさ。
ねぇロキオ。普通に考えてちょっと強引ではないか?
「朝からお疲れさま。眠かったらゆっくり寝たらいいよ。」
なだめてからベッドを離れようと試みる。
すると彼は、とんでもないことを口にした。
「僕が眠いということは、僕のワイフも眠いってことだね。さ、寝よう!ハイ、スリーーープ!」
こんな理屈、ジャイアンでも押し通せない。
結婚してからずっと、わたしの役目は1人で眠れない彼をなだめること。
夜も同じで、わたしが仕事から帰ってきてソファに座った瞬間に
「おつかれ!早くシャワー浴びてきて~そして一緒に寝よう」
と言われる。いや、ロキオくん?わたし今座ったばっかりやん・・・?
わたしは仕事の後、お茶を淹れてまったりしたりビールを飲みながら物思いにふける時間が好きだ。体力がまだあるときは文章を書いたり、先日の記事で書いた「ガールズお茶会」の構想を練ったりする。こういう「自分時間」が1日の中で少しでもある方が、わたしの場合はライフスタイルが整うのだ。
わたしはなんとかしてロキオをなだめて自分時間を確保しようとする。
先に寝ててね、待たなくていいからね。と何度も念押しをし、まくらを4個彼の身体の周りに設置して(ロキオはまくらが大好き)スムーズに眠りに入れるように快適な空間を作り、最後に「おつかれさま。アイラブユー!」まで伝えてベッドを去る。
「はっはっは。これで完璧。もうこれでおとなしくぐっすり寝るだろう」
心の中でうしっ!とガッツポーズをしながら自分時間の準備をする。
数分後。
「タラタララ~タラ~♪」
なにやらベッドの方から聞こえるので、おそるおそる振り返る。
ロキオが携帯でゲームを始めた音だった。
「寝ていいよっていったじゃん!てか寝て!!!」
彼はベッドの手前にある本棚の隙間に隠れながら、たまにちらちらわたしを見て無邪気に1人かくれんぼをして遊んでいる。
わたしはため息をついた。
彼はまた言う。
「僕はね、ワイフがいないと眠れないの。だから早く帰ってきて」
こういうことを言いながらベッドでだだをこねる女の子がいたら、可愛すぎて彼氏は悶えると思う。
でもベッドに横たわっているのは181cm100キロの巨大なおっさんであり、しかもそのおっさんは高確率でパンツ一丁なのだ。
そんなロキオなので、わたしもたまには自分時間を諦めて「はいはい、一緒に寝よう」と折れる時もある。そうすると、彼はとても喜ぶ。髭をこすりつけてじょりじょりしてくる。
逆にほったらかしすぎると拗ねてしまってズーンと暗い空気になることがあるので、そこはわたしが頃合いを見計らってフォローする。そのへんは一緒に住んでいるうちに学んだ。たまには構ってあげないとね。
わたしはこういうロキオの性格をわかっているから、彼とわたしの2人3脚のこの長ーい旅においては「彼の気持ちを察してなだめる」というのがわたしの役割だと思っている。わたしなしで眠れない彼も彼の一部だし、そういうところもひっくるめて好きだし一緒にいるからだ。
これからもわたしは彼をなだめ続けるんだろう。
そろそろロキオが、「早く寝よ~」と言い出すころだ。
今日はこれくらいにして、彼の待つ寝床へ向かうとしよう。
☀おしまい☀